涙を拭きながら、なあ、と遠藤くんが林太郎を見た。



「お前、江竜さんたちの前だと、訛り丸出しなのな」

「えっ、そう?」



とたんに林太郎が、恥ずかしそうにぱっと頬を染めた。

智弥子がアイスティを飲みながらうなずく。



「私、逆に驚いた、遠藤くんの前だと、すっごい頑張ってこっちの言葉、話すのね」



ほやった? と今度は私たちに向かって言うのに、思わずみんな笑った。

どうして笑われたのか、遅れて気づいたらしい林太郎が、肩を落として情けない声を出す。



「僕、こっちの喋りかたのが、ずっと楽なんや、ほやけど」

「学校でそれやると、かわいーって言われちゃうんだよな、主に女子に」



にやにやする遠藤くんに、いらんこと言うなや、と噛みついた。

林太郎は、部活に入らずに、クラブでサッカーをしているため、いまひとつ学校では影が薄いように見える。

少なくとも中学の時は、そう見えてた、のに。



「そうなの? 高校じゃ違うよ、控えめにもててるよ」

「なんかわかる、水面下って感じでしょ」

「まさしくそれ」



林太郎を指さしながら、智弥子たちが仲よく笑う。

はああ? と言いたいのをこらえていたら、バカにしたような目つきをもらった。



「新が気づいてなかっただけで、中学の頃も、そんな感じに人気、あったよ、林太郎を好きって子、何人か知ってるもん」

「誰?」



どこそこの誰それ、とあっさり暴露された名前に、今度こそ、はああ? と声が出た。



「そこそこの女子じゃん」

「そうよ、だから、林太郎だってそこそこなんだって」

「女の子の会話、怖いな…」



ほっといてよ、と意外にもぴしりと言い返した智弥子に、遠藤くんはおおらかに微笑み。

林太郎は困り果てた顔で、嘘やほんなの、とふてくされていた。