嘘、と驚く私と智弥子に、林太郎が、嘘や、と笑う。



「な、僕、ちゃんと渡したよな?」



ひじで小突かれた遠藤くんは、なんでか文句を言いたげに顔をしかめた。



「もらったよ、去年の話だろ」

「なんて返事したんだっけ」

「うるせーよ」



言いながらふたりが、ついに大声で笑いだす。

何がそんなにおかしいのか、さっぱり理解できない私と智弥子は、顔を見あわせた。



「何?」

「男やったんや、その手紙くれたの」

「ええっ!?」



仰天する私たちをよそに、林太郎と遠藤くんは、もうこらえきれないみたいに、お腹を抱えてる。

え、あそこの高校、男子校じゃ、ないよね?

遠藤くんがヒイヒイ言いながら説明してくれた。



「ほんと女の子みたいな感じの、可愛い顔した奴で、変な断りかたしたら傷つけるんじゃないかって、もう俺、すごい悩んで」

「ほやで、こいつ、弥栄どうしよう、どうしようって本気で困ってて、どれだけいい奴やのって話やろ」

「で、どうしたの?」

「どうもしないが、向こうの遊びやって」



えええ、と私と智弥子の声が重なった。

いたずらってこと?

なんだそれ、ちょっと悪質なんじゃないか。

けどふたりは、明るく首を振る。



「なんか俺の反応、見たかったらしくて」

「こいつ人気者やで、たまにそういうあかん奴、いるんや、みんな暇やのぉ」

「ひどくない? 怒らなかったの?」

「怒ってもよかったんだろうけど、あの時はもう、ただただ猛烈に安心したよね」



思い出すだけで楽しいのか、林太郎と遠藤くんは、笑いがとまらないらしい。

こんなに活発に笑う林太郎、初めて見た。

よく考えると、村の同じ年頃の子は女の子が多いから、男友達といる林太郎を、私はあんまり見たことがなかったんだ。