「新、昼休みのあと、どこ行ってたの?」
「あー、ちょっと涼んでた」
「外で?」
のどかな駅前の、雑踏と言えなくもないにぎわいの中で、疑わしそうに、智弥子がじろじろと視線を投げてくる。
早くもこんがり焼けた肌が、夏らしい。
「新、最近、何か隠してない?」
「何かって、たとえば」
待ってましたとばかりに、智弥子が私を指さした。
「みんなに内緒で、何か飼ってる」
伸二さんがそのへんにいないか、思わず確かめてしまう。
変にプライドの高いあの人に、聞かれたら面倒すぎる。
「なんでまた?」
「たまにひとりでぶつぶつ言うし、今日みたいにふっといなくなるし。学校の倉庫とかに、犬でもかくまってるんじゃないの?」
「すごい推理」
「当たってる?」
「当たってない」
「隠し事は、してるってことね」
そういうの、ずるい。
もう、否定も肯定もできない。
「新って昔から、ひとりで悩んで、いつの間にか答え出してるからなあ」
「そんなつもり、ないけどな」
「ま、何か考えてるなら、話してよ」
とんと肩を叩くという最小限のふれあいで、智弥子は長いつきあいに裏打ちされた親愛を示してくれた。
心の奥で、地鳴りのような音がした。
こんなふうに、ごまかしたりしてないで、智弥子にこそ言うべきなんじゃないの。
ちゃんと、言ってお別れするべきなんじゃないの。
それこそが、今私がするべきことなんじゃないの。
バイバイって。