「話したろう、俺たちは魂が浮遊しないために派遣されるんだ。我々を歓迎するような人間に、そもそも俺たちは必要ない」
「なるほど、じゃあ全員が全員、担当についてもらえるわけじゃないんですね」
低い呻き声は、肯定だろう、たぶん。
すると私が伸二さんに出会えたのは、幸運でもあるわけか。
いやどうかな。
これを幸運というのも妙な気がして、首をひねる。
つまり、成仏しなそうに見えたってことじゃないか。
「今日で、四日目です、先週の木曜に、会ったから」
「そうか」
あっさり立ち直った伸二さんが、風の匂いを嗅ぐように、気持ちよさそうにちょっと、顎を上げた。
何かが確認できたのか、うなずく。
「まだ、半分てとこだ」
「あと四日あるってことですか?」
「そこまで明確じゃないが、少なくとも一両日中にいきなりってことは、ない」
そうか。
それはそれで、何か活用方法がある気もする。
「常識を超えた危険に、自ら身をさらしたりした場合は、この範囲じゃないと、釘を刺しておくぞ」
「よく考えてることがわかりましたね」
「基本中の基本だ」
予定日を宣告された人間の、行動パターンマニュアルでもあるんだろうか。
だって四日後に死ぬと言われたら、じゃあそれまでは何をしても大丈夫なのか、試したくなるじゃないか。
命が惜しくてあきらめていたことに、挑戦してみたくなるじゃないか。
…たとえば、なんだろう。
線路を歩いて旅するとか。
ライオンをなでてみるとか。
スカイダイビングとか?
「ちっさ」
「自分の卑小さに気づき、なおかつその事実を嫌悪しないというのは、すばらしい前進だ」
「独り言にレスしないでもらえますか」
「では、今から言うのは独り言だと、宣言してから始めたらいい」
気を悪くしたらしい死神は、すねた声を出した。