話しているうちに、嫌な想像がとまらなくなって、恐怖のあまり、喉がひきつった。
お母さんが、ひとりで怖い思いや、痛い思いをしてたらどうしよう。
私を呼んでるかもしれない。
誰かに邪険にされて、傷ついてるかもしれない。
不安で、泣くこともできずにいるかもしれない。
もしかしたら、もう。
もう。
「嫌だ、お母さん、どうしよう、お母さん」
「あっちゃん!」
鋭く呼ばれて、反射的に黙った。
「大丈夫や、落ち着こ」
な、と林太郎が肩に置いてくれる、その両手の温かさに、我に返る。
顔が涙でぐしゃぐしゃで、全身が震えていることにも、今ごろ気がついた。
ヒノキの香りが漂う、贅沢な玄関のたたきで、林太郎が少し身をかがめて、私の目をのぞきこむ。
「おばさんが、家にいないんやな」
「うん…」
「今朝は、いたんやね?」
「うん」
うなずくたび、涙がぱらぱらと落ちた。
ゆっくりと、丁寧に言って聞かせるような声。
「大丈夫や、僕がいるで、一緒に探そっさ」
林太郎の着てる白いTシャツは、私がやみくもにつかんで引っぱったせいで、すっかりくしゃくしゃで。
布地を握りしめたまま、固く緊張してる私の手を、ほぐすように林太郎は、優しく叩いて、握ってくれる。
「おばさんは絶対、大丈夫や、きっと帰る道がわからんくなってるだけや、見つけてあげよ」
な、と見せてくれる微笑みは、頼もしくて。
大丈夫、とかあんたに言われたって。
林太郎が保証したって、しょうがないじゃん。
林太郎がいたって、事態は変わらないじゃん。
そんな可愛くないことも、思うのに。
優しくて、穏やかな声と。
どうも緊張感に欠けてるように聞こえて、普段は私をいらいらさせることもある、不思議なイントネーションと。
まっすぐな目と、あったかい手が。
涙もとまるほど、安心させてくれた。
お母さんが、ひとりで怖い思いや、痛い思いをしてたらどうしよう。
私を呼んでるかもしれない。
誰かに邪険にされて、傷ついてるかもしれない。
不安で、泣くこともできずにいるかもしれない。
もしかしたら、もう。
もう。
「嫌だ、お母さん、どうしよう、お母さん」
「あっちゃん!」
鋭く呼ばれて、反射的に黙った。
「大丈夫や、落ち着こ」
な、と林太郎が肩に置いてくれる、その両手の温かさに、我に返る。
顔が涙でぐしゃぐしゃで、全身が震えていることにも、今ごろ気がついた。
ヒノキの香りが漂う、贅沢な玄関のたたきで、林太郎が少し身をかがめて、私の目をのぞきこむ。
「おばさんが、家にいないんやな」
「うん…」
「今朝は、いたんやね?」
「うん」
うなずくたび、涙がぱらぱらと落ちた。
ゆっくりと、丁寧に言って聞かせるような声。
「大丈夫や、僕がいるで、一緒に探そっさ」
林太郎の着てる白いTシャツは、私がやみくもにつかんで引っぱったせいで、すっかりくしゃくしゃで。
布地を握りしめたまま、固く緊張してる私の手を、ほぐすように林太郎は、優しく叩いて、握ってくれる。
「おばさんは絶対、大丈夫や、きっと帰る道がわからんくなってるだけや、見つけてあげよ」
な、と見せてくれる微笑みは、頼もしくて。
大丈夫、とかあんたに言われたって。
林太郎が保証したって、しょうがないじゃん。
林太郎がいたって、事態は変わらないじゃん。
そんな可愛くないことも、思うのに。
優しくて、穏やかな声と。
どうも緊張感に欠けてるように聞こえて、普段は私をいらいらさせることもある、不思議なイントネーションと。
まっすぐな目と、あったかい手が。
涙もとまるほど、安心させてくれた。