偶然見つけた掲示板だった。
元は、どこかのサイトのメニューのひとつだったんだろう。
親サイトはもう閉鎖されたらしく、離れ小島状態の掲示板。
タイトルはただ「BBS」とあるだけだ。
初期のカキコを見る限りでは、個人が趣味仲間と集まる場にしていたものらしかった。
“管理人”には新しい投稿をする権限も、タイトルを編集する権限も当然ない。
だから過去の投稿に対するレスを使って、延々とやりとりが更新されている。
その彼がカキコする際のハンドルネームが【サンクスノベルズ管理人】なのだった。
「“彼”ってことは、男なの?」
「知らないけど、なんとなく」
その日にあった“ありがとう”にまつわるエピソードを誰かが書きこむと、管理人がそれを小説にする。
小説は連作で、トワという主人公が“ありがとう”の言葉を集めて回る、それだけのストーリー。
「このトワが謎でね。人間じゃないっぽいんだけど、それは伏せられてるの」
「あ、そう」
「“ありがとう”を集めると最終的にどうなるのかも、明かされてないんだよ」
へえ、と再び生返事が返ってきたので、もう好きにさせておくことにして、自分の席に戻った。
智弥子は食い入るように画面を見ながら、時折マウスをいじっている。
わかる、私も初めてあの掲示板にたどりついた時は、あんなだった。
智弥子が我に返ったのは、チャイムも鳴って、とっくに先生も教壇に上がり、にやにやとみんなが見守る中でのことだった。
元は、どこかのサイトのメニューのひとつだったんだろう。
親サイトはもう閉鎖されたらしく、離れ小島状態の掲示板。
タイトルはただ「BBS」とあるだけだ。
初期のカキコを見る限りでは、個人が趣味仲間と集まる場にしていたものらしかった。
“管理人”には新しい投稿をする権限も、タイトルを編集する権限も当然ない。
だから過去の投稿に対するレスを使って、延々とやりとりが更新されている。
その彼がカキコする際のハンドルネームが【サンクスノベルズ管理人】なのだった。
「“彼”ってことは、男なの?」
「知らないけど、なんとなく」
その日にあった“ありがとう”にまつわるエピソードを誰かが書きこむと、管理人がそれを小説にする。
小説は連作で、トワという主人公が“ありがとう”の言葉を集めて回る、それだけのストーリー。
「このトワが謎でね。人間じゃないっぽいんだけど、それは伏せられてるの」
「あ、そう」
「“ありがとう”を集めると最終的にどうなるのかも、明かされてないんだよ」
へえ、と再び生返事が返ってきたので、もう好きにさせておくことにして、自分の席に戻った。
智弥子は食い入るように画面を見ながら、時折マウスをいじっている。
わかる、私も初めてあの掲示板にたどりついた時は、あんなだった。
智弥子が我に返ったのは、チャイムも鳴って、とっくに先生も教壇に上がり、にやにやとみんなが見守る中でのことだった。