「誘ったの?」
「ううん、向こうからそんな話、してくれたの、来週末、暇? みたいな感じで」
「うわー、曖昧」
「照れ屋なわけよ、そこがいいの」
フォローする智弥子の頬が赤い。
可愛いじゃないか、こいつめ。
「でもそうすると、新、林太郎とふたりになっちゃうじゃん、大丈夫かなって」
「なんで私が林太郎と行くことが決まってんの」
「違うの?」
黙った私を、どう解釈したのか。
智弥子はぽんと私の肩を叩いて、自分の席へ戻った。
「あっちゃん」
「うわあっ」
木陰で涼んでいたところに、いきなり真上から声をかけられて、思わず悲鳴をあげた。
見あげると、背中を預けていた石垣の上に、林太郎がしゃがみこんでいる。
「やっぱりあっちゃんやった、最近、よう会うね」
「…クラブは?」
「もう終わったで」
何時やと思ってるん、と言われて見渡してみれば、もう日暮れ時だった。
今日は土曜なので、半日だけの授業を終えて、朝適当に詰めてきたお弁当を神社の境内の裏手で食べて。
少し考え事でも、と思っていたら、そのまま数時間過ごしてしまったらしい。
背丈くらいの高さから、林太郎が身軽に飛び降りる。
何か楽しいことでもあったのか、話したくて仕方ないみたいに、のぉのぉ、と懐こく隣に腰を下ろした。
「ちーちゃん、彼氏いたんやな、僕、全然知らんかったで、びっくりしてもて」
「あー、彼氏っていうか…彼氏なのかな? 林太郎、なんで知ってんの」
「だって相手の男、僕のクラスメイトやって」
そうなのか!
そういえば林太郎と同じ高校ってことは聞いてた。
想像以上に狭いな、世間。