ここまで来ると、翻訳機能のミスなのか伸二さんの語力の限界なのか、もはやよくわからない。

彼は、そうか、とあっさり納得し、ふわりと浮いて、次に気づいた時にはうしろの荷台に座っていた。



「よく眠れたか」

「そんなわけないでしょう、出しますよ」

「何をだ?」

「自転車をです」



マジックか、と嬉しそうに手を叩く。



「発進しますよって意味です」

「なんだ」



急につまらなそうになった伸二さんは、重さも感じさせないのに、自転車の出発に合わせて揺れるという凝った芸当を見せた。

うしろ向きに座って、遠慮なしに私に寄りかかり、今後について何か希望はないかと訊いてくる。



「特に思いついてないです」

「そうか」

「伸二さんたちは、全部の生き物に対して、その、仕事をするんですか?」



いや、と温かい背中が言った。



「終わりに納得を求めるのは、ヒトと一部の動物だけだ、俺たちが担当するのは、そういう生き物だ」

「一部の動物っていうのは、犬とかですか」

「そうだな、賢い個体や、人間と長く過ごしたりした動物は、何か手を打ってやらないといけないことが多い」

「成仏できないってことですか」

「そう、ジョーブツだ。これができないと、魂が還元されず、ひたすら漂うことになる」



還元ってのは、生まれ変わるってことだろうか。

疑問を口に出した覚えはないのに、近い、と伸二さんがうなずいた。