一重の、和風の目がまばたきをする。

たぶん唐突な質問に戸惑ってるのと、誘いをはぐらかされたのとで、傷ついたような表情を浮かべて。

それでも律儀に考えこんでから、わからん、と首を振った。



「泣かないかもって意味?」

「違うわ」



のぞきこむようにして、私と視線を合わせる。

こいつ、こんなふうにしないと目線が並ばないくらい、背が伸びてたんだ。



「泣くくらいで済むんやったらいいなあって」



恥ずかしそうに、その顔がほころんだ。



「ほういう意味や」



ハンドルに置かれた手が、かすかに動いた。

手を握られるのかと一瞬緊張した。


けど林太郎は、遅刻や、と今さら慌てだして。

信号が変わるなり、ほなの、と言い残して猛スピードで先に行ってしまった。


耳が赤くなってるのが見える。

サッカークラブの練習がある日らしく、背負ったスポーツバッグが重たげに揺れてる。


林太郎、ごめん。

ごめんね。


私たち、兄妹なんだよ。

血が繋がってるの。



「何を泣いてる」

「泣いてません」



なんだってこんな、一番会いたくないタイミングで。

げんなりしたところに、ふっと影が差し、顔を上げると、伸二さんが自転車のカゴにとまっていた。



「何を笑ってる」

「鳥みたいだなって思って」

「俺はそんなに忘れっぽいか」

「トリ頭と言ったわけではありません」