「夏祭りは、行くん?」
「いつだっけ」
「来週の今日や」
頭の中で、指を折って数えた。
来週の今日ってことは、私が伸二さんに会ってから、九日目にあたる日だ。
──だいたい一週間から10日くらいの間かな。
「…微妙だな」
「予定、あるんか」
「いや、うん、予定というか、まあ」
…予定だね、と目を泳がす私に、林太郎が首をかしげた。
「どっちやの」
「読めない日ってあるじゃん」
「ちーちゃんは? 去年ふたりして、来年は絶対彼氏と来るって豪語してたが」
「智弥子だけでしょ、私はそんなこと言ってない」
「ほやったっけ」
「ほやったよ」
伝染った。
林太郎が、白い歯を見せて笑う。
こういう顔すると、小さい頃の面影が濃く出て、私の胸はどうしてだかぎゅっとつかまれたように痛む。
駅前の信号につかまった時、のぉ、とふいに林太郎が、私の自転車のハンドルに手を置いた。
重みで自転車ごと少し、そっちに傾いた。
「もし、行けるようなったら、僕と行こっさ」
熱い指が、わずかに私の手に触れる。
照れくさそうに微笑んで、だけどまっすぐに私をのぞきこむ、善良な坊ちゃんの瞳。
せっけんの匂いがした。
「…林太郎さあ」
「ん」
「私が死んだら、泣く?」