「…何これ、ブログ?」

「掲示板だね、それもかなり昔の。放置されてたのを、誰かが見つけてコミュの場にしてるみたい」

「でも、管理人って」

「それは、ある投稿者のハンドルネーム。掲示板を立てた人って意味じゃなくて」

「誰なの?」

「それを知りたいの」



怪訝そうにする智弥子に、私はいくつかの“カキコ”をすっ飛ばして“管理人”の発言まで画面をスクロールした。





はい、と小さな手が花束から一本ガーベラを抜きとって、店主に差し出した。

店主は一瞬呆然としたものの、はっと気をとり直すとそれを受けとり、ありがとう、と震える声で言った。

トワの身体に、光り輝く鋭い何かが飛びこんできた。

いつもの感覚。

流れこんでくる、店主の心。

不仲の妻、自分を毛嫌いする娘、その娘が幼かった頃、しきりに繋ぎたがってきたふくふくと頼りない手。

全身の神経を集中させて、その熱さをじっと味わう。

収束した感覚は限界まで凝縮すると、ぱっと弾け飛ぶように拡散した。



(あと少し)



大きすぎるエネルギーを吸収したせいで一時的にふらつきながら、トワは古びた電信柱のてっぺんから飛び立った。





そのへんの誰かの椅子を引きずってきた智弥子が、私の隣に腰を下ろした。



「何、これ」

「見ればわかるでしょ、小説」

「寄せられたコメントを元に、その管理人て人が小説を書いてる、ってこと?」

「コメントじゃなくて、カキコ」

「…それ、死語じゃない?」

「うるさいな」