「…それは、あなただけの番号ですか」

「まさか。このエリアに42番めに配属されたってだけだ。配置が変われば変わるし、前があけばくり上がる」



くり上がる。

自分より番号が若ければエリア内での先輩で、大きいほど新参者か。

なるほどね、とわかりやすいシステムに納得しかけて、それが意味することにふと、目の前が暗くなった。

くり上がるのは、先に配属された死神が、仕事を終えたからだ。

すなわち、誰かの命が終わったからだ。



「くり上がったら、名前も変わっちゃいますね」

「安心していい、ひとつの仕事の間は、番号は保持だ。きみたちが混乱するから」

「そんなにくるくる変わる名前なのに、気に入ってるように見えますが」

「当然だろう」



まだ遠慮なく荷台に座ったままの死神は、長い脚を組んで胸を張る。



「今、このエリア内に、42号という担当者は、俺だけなんだぞ」

「…それがそんなに、誇らしいですか?」



ぽかんとすると、死神もぽかんと目を丸くした。



「自分だけの番号だぞ?」

「でも、今だけのものでしょう?」

「たとえ今だけでも、俺だけのものなんだぞ。それを誇りに思えないんなら」



――きみたちの誇りとは、いったいなんだ?