瞬間、パシンと何かが弾ける感覚がした。

一瞬、意識が飛んで、目の前がちかちかする。



「よおし、タブーはひとつ消えたぜ、おい伸二、意味がわかってるか」



テンが両手で、ぐいと伸二さんの顔を持ちあげた。



「お前は、食料を受けつけねえように改造されたんだ、徐々に徐々に、本人も気づかないうちに、飢えてくようにな」

「なんだと?」

「本来、人間からの感謝はオレたちの動力源だ。思ってもらうだけでも違うが、やっぱり言われんのが一番だ」



言ってから、おーすげえ、ときょろきょろする。

ペナルティが訪れないことで、タブーが本当に消えたのを実感しているんだろう。



「身体は覚えてるはずだ、伸二」

「俺には…」

「思い出せ、何がオレたちを生かすのか、何がトワを、消滅に至らせたのか」



なんて残酷な枷だろう。

栄養素へのアレルギー反応。

それはそう遠くない、死を意味しているはずだ。

そんな罰を受けるほどの、何を伸二さんがしたというのか。


思い出してよ、伸二さん。

そんな枷、自分で壊しちゃって。


励ましたくて、呆然と立ったまの伸二さんの、手をとった。

頭の中に、叩きつけるようにビジョンがぶつかってきた。



伸二さんが、半透明になったトワを腕に抱いて、誰かに叫んでいた。

それを少し離れたところで見ているのは、テンだ。



──なぜ言ってやらなかった



エコーがかかったみたいに、反響する声。



──なぜ言ってやらなかった、たったの5文字

──こいつはお前に、さんざん尽くしたのに



ああ、わかった、糾弾されているのは、村長だ。



『誰だ、お前は』

『これを見ても、そんなつまらん疑問のほうが優先か』