「伸二、無茶だっての、そんな状態で」
「これ以上、邪魔をするな」
忌々しげに頭を振って、懸命に意識を保とうとしているように見える。
私を包む光が、強くなってきた。
伸二さんが、目を閉じた。
「やめろ、お前のほうが危ない」
「黙れ」
「オレが力を貸す」
「笑わせるな、消すぞ」
テンを追い払おうとしたんだろう、伸二さんが放った衝撃波みたいなものは、空中でふっと霧散した。
そら見ろ、とテンが毒づく。
「お前、一度、散らしてるだろ、もう無理だよ」
「…そんな」
呆然と自分の両手を眺めて、伸二さんはもう一度、そんな、とつぶやいた。
彼をとりまく、びりびりした気配が、一度、二度と、大きくふくらんではしぼむ。
車がスタート前に空ぶかしするみたいな、あんな感じに、自分の出力を試しているように見えたそれは。
突然、極端にふくらんだかと思うと、激しい音をたてて弾け飛んだ。
「バカな!」
「だから限界なんだよ、お前」
「彼女はどうなる、俺が運べなかったら、彼女は」
「ね、伸二さん」
「さまようのを黙って見ていろと言うのか」
「だからオレが手を貸すって」
「貴様にそんなことができるか!」
「やってみなきゃわかんねえだろ!」
「ねえっ、わかったってば、ありがとう、でしょ」
何かに殴られたように頭を揺らして、私は伸二さんが、そのまま倒れてしまうんじゃないかと思った。
危ういところでテンの腕を借りて体勢を立て直すと、割って入った私をじろっとにらむ。
「嫌がらせか」
「違いますって、ねえテン、当たってるでしょ、それがエサなんでしょ、今のがつまり、枷で」
我ながら要領を得ない説明に、伸二さんの背後で、テンが、にいと牙を見せた。
「よくやった、人間!」
「やっぱり!」