そうだった、彼の仕事は、私がこの世に未練なく去れるようプロデュースすることだ。

悄然と息をつく伸二さんに申し訳なくなり、はっと気がついた。



「どこか、悪いんですか」

「え?」



こちらを見る、顔色がよくない。

「痩せた」とテンが言った時、そうかなと思ったけれど、こうして日の光の下に出てみると、確かに以前より、青白く力ない。

私の視線を避けるように、伸二さんは自分の頬をさわりながら、問題ない、と言った。



「でも実際」

「問題ない」



頑なな声。

黙った私に、すまない、と謝る。



「心配しなくていい、きみのことは責任を持って、全力で送り届ける」



伸二さん、私、そんなこと気にしてるんじゃないですよ。

純粋に、あなたが心配なんです。


私が消えたあとも、あなたは残るんでしょう。

死神の寿命なんて知らないけど、きっと途方もなく長い時を、何人もの終わりに寄り添いながら、過ごすんでしょう。


欠けた記憶と、封じられた力にひとり、首をひねりながら。



「今の俺が言うのもなんだが、安心してくれていい」



気づかわしげで優しい声が、痛ましかった。





「何これ、どうしたの」

「お母さんが昔着てたの、あーちゃんにあげる」



昼食後、母がどこからか持ち出してきたのは、浴衣だった。

白地に藍色で、古典的な水紋と芍薬の柄が入っている。

着付けてあげるから、と言われ、腰が引けた。



「いやでも、今日は林太郎と会うだけなんだけど」

「だから着てくんでしょ、林ちゃんの前で可愛くしなくて、どこでするの」

「こんなの着て、どんな顔して会えって」

「絶対に喜んでくれるわよ、大丈夫」



そりゃ喜ぶだろう。

それが想像できるから、素直に着る気になれないのだ。

さあさあ、と服を引っこ抜かれ、私は丸裸になった。