「あんた、もうちょっとおじさんに似てもよかったのに」
林太郎の、すっきりしすぎとも言える顔立ちを眺めて同情すると、彼はちょっと困ったように眉を寄せて。
「似たかったのお」
のんびりとそう言った。
うちで一番大きなボウルに山盛りの梅の下ごしらえを済ますと、もう昼だった。
あとはホワイトリカーでもう一度消毒をして、塩をまぶして陶製のかめに詰める。
「うちで食べていけば?」
「なんも言ってこんかったで」
律儀な林太郎は、家に自分のぶんが用意されているからと、名残惜しそうにしながらも辞去する。
するとなぜか、私よりも一緒に食べたがっているであろう母が、しっしっと手を振って追い立てた。
「そうよ、男の子はもう帰りなさい、ご飯のあと、あーちゃんは、お祭りの準備をするんだから」
「え」
「林ちゃんと行くんでしょ?」
まさかそうよね、て感じに、母がきょとんとする。
確信犯なのか、天然なのかわからない。
向こうが蒸し返さないのを幸い、昨日のことを謝りもせず、なかったふうを装っていた私は、気まずく林太郎を見て、頭に来た。
なんと、勝ち誇った笑みを浮かべているじゃないか。
「何よ、その顔」
「なんのこと?」
「あんた、調子に乗るのもいい加減にしなよね」
「僕はいつだって、おとなしくて謙虚や。ほれだけが取り柄やって、あっちゃんにずうっと言われてきたもん」
腹立つ!
しれっとそんなことを言い放った林太郎は、ほなのー、とのどかに手を振って、廊下へ消えかけ、あ、と振り返った。
「夕方、迎えに来ていい?」
「小学生じゃないんだし、現地集合でいいでしょ」
「あーちゃん、可愛くしなさい!」
何年ぶりかにお尻を叩かれて、ぎゃっと声をあげた私を、林太郎が笑う。