「実の兄とメシより、嫌な後輩と寝る方がお好みってことですか?」


「やめて。私、いつも嫌だって言ってるじゃない」


「身体は嫌がってないので。それにしても誤解を解こうと必死なあなたは可愛いですね」


そうだ。
そもそも、私が誰と食事に行こうが、彼にとやかく言われる筋合いはない。

焦って弁解を重ねた自分が急に恥ずかしくなった。
なにをバタバタと言い訳していたのだろう。自分の自由を葦原くんに差し出しているのは私じゃないか。


葦原くんがきつい拘束を解き、あらためて私を抱き寄せた。
それから、柔らかく唇を重ねてくる。先までの強引さは消え失せ、優しくついばむように唇を合わせる。

私はそのキスに妙な安堵を感じ、全身の力を抜く。

誤解がとけた安堵?
彼の怒りが収まった安堵?

どっちにしろ、キスにほっとしていたら重症だ。
私は、兄と同じくらいこの男が嫌なはずなのに。


「俺とあなたの関係にもうひとつ条件を付け加えます」


夢中でキスを交わしながら、葦原くんが言う。


「男も女も、俺以外の人間と過ごすの禁止」