私は話を打ち切りたくて、スマホに視線を落とした。
わざとらしく、「あ、仕事残ってた!行かなきゃ」なんてできるほど演技力はない。
スマホにはLINEのメッセージが入っていた。
『すぐに俺の部屋へ』
葦原くんだ。
今日は誘われていないし、用事がある旨は事前に言っていた。
返事をためらっていると、既読になったことに気付いたのだろう。葦原くんが電話してきた。
「はい」
私は兄に断り、電話に出る。
兄が私と葦原くんの電話に耳をそばだてている気配を感じながら。
「九重先輩」
葦原くんが呼んだことない呼び方で私を呼んだ。
「お帰りになったところをすみません。ちょっと、緊急なんですが、戻れますか?安野産業のシステムが止まっちゃってるんですよ。これだと、今夜のバッチがかからない状態です」
安野産業は未來さんのご主人の会社だ。取引はあるけれど、私はシステム構築や管理まで手を出していない。
そして、葦原くんも同様だ。
葦原くんは気付いている。今、私が誰かと食事していることを。
そして、その相手まで意識して電話をしてきているのだ。
わざとらしく、「あ、仕事残ってた!行かなきゃ」なんてできるほど演技力はない。
スマホにはLINEのメッセージが入っていた。
『すぐに俺の部屋へ』
葦原くんだ。
今日は誘われていないし、用事がある旨は事前に言っていた。
返事をためらっていると、既読になったことに気付いたのだろう。葦原くんが電話してきた。
「はい」
私は兄に断り、電話に出る。
兄が私と葦原くんの電話に耳をそばだてている気配を感じながら。
「九重先輩」
葦原くんが呼んだことない呼び方で私を呼んだ。
「お帰りになったところをすみません。ちょっと、緊急なんですが、戻れますか?安野産業のシステムが止まっちゃってるんですよ。これだと、今夜のバッチがかからない状態です」
安野産業は未來さんのご主人の会社だ。取引はあるけれど、私はシステム構築や管理まで手を出していない。
そして、葦原くんも同様だ。
葦原くんは気付いている。今、私が誰かと食事していることを。
そして、その相手まで意識して電話をしてきているのだ。