「違うって。誰か紹介してほしいくらい」


佐賀さんは「なんだ、違うのか」と唇を尖らせながら、思いついたように言った。


「そうだ！鎌田部長のご主人経由の合コン！……ていうか、結婚式二次会がビッグチャンスじゃないですかぁ！九重さん、ともに気合い入れましょ！」


佐賀さんは無邪気だ。だから、私みたいな人付き合いが苦手な人間にも容易に切り込んでくる。席が隣という理由だけで。
そんな彼女のパワーが嫌いではない。むしろ、私には持ちえない能力を尊敬する。

問題なのは隣のデスクの島で、この話を聞いている男がいることだ。
何食わぬ顔でPCに向かう葦原くんはたぶん笑いを堪えている。

最悪だ、今夜はこれをネタに嘲笑されるのだろう。
週末も彼に呼び出されたのばかりなのに、今夜も彼に予定を押さえられている。



「九重、ちょっといい？」


次に声をかけてきたのは先輩男性社員の北原さんだ。隣には部下の小波くんもいる。