葦原くんは私を自分の身体で包むように隠しながら、ぎゅうぎゅうのエレベーターに最後に乗り込んだ。


「葦原くん……」


「しぃ……。喋ると、この中で触りますよ」


葦原くんは私の身体を抱きしめ、ドアに押し付けるようにしながらかばっている。西入部長の姿は、葦原くんの身体の向こうでまるで見えない。

私は葦原くんのスーツの胸に顔を押し付け、身動きがとれなくなっていた。
私の両脚の間に彼の脚が挟まり、両腕は誰の目にも触れないのをいいことに私の腰からヒップに回されている。

セクハラ部長から逃れたと思ったら、強姦魔に捕まってしまった。
妙にいやらしく密着してしまい、過る情事を頭から振り払うことに苦心する。
嫌だ、勝手に脳内でリプレイするな、私。


目的階に到着する前に、私は葦原くんに手を引かれ、エレベーターを降りた。

一番手前に乗っていたので、降りざるを得なかったのだけれど、私たちの階はまだ上だ。
階段で行くつもりだろうか。


「葦原くんっ」


「沙都子さん、ちょっとこっち」