「沙都子?」


未來さんに顔を覗き込まれ、私は顔をそむけた。
まわされた腕をやんわりとはずし、腰を浮かせる。


「未來さん、ごめんなさい。ちょっと酔っちゃったみたいです。せっかくのお祝いなのに、申し訳ないんですがお先に失礼させていただこうかと」


「え、大丈夫?もしかして体調悪かったの?送るよ」


未來さんが心配そうな顔をするから、余計に胸が痛む。
私は首を振って、席を立った。


「今日の主役がそんなことしないでください。ひとりで帰れますよ」


私は未來さんにしか見せない全力の笑顔を向け、同期の与野に会費相当のお金を預けると半個室から抜け出した。