「そんなこと、ぬけぬけと言えちゃうんだね」


「あなたは俺のこういう本性を見抜いて嫌ってるんでしょうね。わかるんですよ。俺はあなたの冷ややかな視線を感じるたびに、自分の底の浅さを見抜かれているようで吐き気がします。この二年、ずっとあなたの存在が引っかかっていた。どうにかあなたを屈服させられないかと、考えてきました。そしたら、千載一遇のチャンス到来」


葦原くんはうっすらと笑う。瞳を細め、わずかに開かれた唇が蠱惑的だ。


「あなたを女として虐げてみたい。素直でしょう?」


この子、怖い。
同じフロアで働きながら、そんなことをずっと考えていたんだ。

無邪気に笑いながら、腹の中で思い通りに動かない私を歯がゆく思っていたんだ。


「一度、言うことを聞けば黙っていてくれるの?」


「ええ、いいですよ。俺のやり場のない憤りも落ち着くと思いますし」


彼がどう思っているかはわからないけれど、私は処女だ。
異性とも同性とも身体を結ぶ機会はなかった。
そして、人と関わりたくない私は、これからもそうなのだと思っていた。