ハンカチをそっと手に取る。

未來さんのハンカチは、未來さんそのものみたい。柔らかくて、可愛らしい。
未來さんが、客先の男性と恋愛しているって気づいた時は、ここまでショックではなかった。この5年間、彼女がずっとフリーだったわけではないから。

だけど、いざ彼女が名実ともに誰かと生涯を誓うという段になったら、私の心は震えだした。

大好きな未來さんが結婚する。

ああ、ずっと違うと思ってきた。
この気持ちは気の迷いなんだって思い込もうとしてきた。

だけど、駄目。もうごまかしようがない。
私は未來さんが好きだったんだ。

先輩としてじゃなく、ひとりの女性として。
初めての恋をしていたんだ。

瞳から大粒の涙がこぼれた。
想いと一緒に溢れ、止まらない。

伝えることのできない恋心。

同性であり、上司であり、もうすぐ結婚する未來さん。
私の気持ちの入り込む余地はないし、元より叶えるつもりもない。