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「レイラさん、大丈夫ですか?」
窓の外が暗くなってきた、夕方の5時。
お客さんの出入りが一段落して、思わずため息をもらしてしまったとき、ルイが眉を微かにひそめて訊いてきた。
私は慌てて笑顔を浮かべ、「平気、平気」と答える。
「今日は朝からお客さん多かったから、やっと途切れてほっとしただけ」
「本当ですか? なんか疲れた顔してますけど」
「ちょっと、妙齢の女性に向かって『顔が疲れてる』は禁句でしょ」
わざと怒った顔で言い返すと、ルイが慌てて首を横に振った。
「ちがう、ちがいます! そんなつもりじゃ」
あんまり必死に否定するので、おかしさと申し訳なさがこみあげてきて、「あはは、冗談だよ、ごめんね」と笑いながら謝った。
「そういう意味じゃないって、もちろん分かってるよ。………心配してくれてありがとう。でも本当に大丈夫だから、気にしないで」
私はルイの肩を軽く叩いて、ホールに戻った。
追いかけてくる視線を背中に感じつつも、いつものように何も気づかないふりをする。
ルイはのんびりしているわりに鋭いところがあるので、こういうときは困る。