リヒトがすっと片手を上げた。



「―――じゃあ、こっち来いよ」



差し伸べられる手。


私は磁石にひきつけられるように、無言でリヒトのもとへ向かう。



敬虔で盲信的な信者のようにリヒトの足許に膝まづくと、リヒトがふっと息を洩らした。


仰ぐように目を上げると、薄くてほんのり赤い口唇が、微かな笑みの形をつくっている。


リヒトが私に微笑んでくれた。

たったそれだけのことで、私の心は、春風に吹かれたように舞い上がった。



「なんで床なんだよ。こっち来いよ」



リヒトが可笑しそうな声音で言い、私の手首をつかんで引っ張り上げる。


ほっそりとしたリヒトの腕は、きっとギターより重いものなど持ったことがないだろうけど、

力をこめた拍子に、薄くついた筋肉が浮き上がり、筋ばって、目を奪われるほどきれいだった。



私はリヒトに導かれるまま、ベッドの上に座る。


リヒトは、抱えていたギターをベッド脇のスタンドに立てて、私を膝の上に座らせた。



「………脱げよ」



低く掠れた甘い声音に囁きかけられて、私はセーターを脱ぐ。


確かめるようにリヒトを見ると、眉根を寄せて言われた。



「全部だよ。早くしろ」



私はセーターの下に着ていたシャツとインナーを脱ぎ、そして下着も脱ぎ捨てた。