やっぱり、リヒトは本物だ。


最近流行っているような、見た目とインパクトだけを重視したような、一過性の安っぽいバンドとは違って、

本当に音楽を理解していて、本物の音楽好きに認められるような曲を書いている。



だからリヒトは、絶対に売れる。

もっともっと売れなきゃおかしい。



リヒトはバンドを作るとき、メンバー集めにかなりこだわっていた。



『楽器が上手くてセンスがあるのは当たり前だ。最低条件だよ。ビジュアルも良くなきゃ、バンドは売れない。チビでデブでハゲたやつがやってる音楽なんて、聴きたくないだろ?』


『女にきゃあきゃあ言われるだけのビジュアルでも駄目だ。男が憧れるような、ああなりたいって思わせるようなやつらじゃないと』



自分の外見が桁外れに良くて、男も女も惹きつけるものだということを、リヒトはよく理解していた。


だから、自分に釣り合うようなメンバーじゃないといけないと言って、長身で細身の見映えが良い人間、という条件を譲らなかった。

太い奴は食欲にとりつかれていて音楽に魂を捧げていないからだめだ、というのがリヒトの持論だ。


その条件で絞りこんで目星をつけた人の演奏を聞き、リヒトのお眼鏡にかなった人だけがリヒトのバンドメンバーになれた。


だから、Dizzinessは抜群に演奏が安定しているし、ビジュアルもずば抜けていた。



そして、そこに、リヒトの作った曲。


ロックだけでなくブルースやジャズ、日本の古い歌謡曲までも取り込んだ、

まだ誰も聴いたことがないような、斬新で鮮烈な音楽。