「ん………お前、この曲どう思う?」



リヒトがギターを抱いたまま、ちらりと私を振り向いた。



「リヒトの曲にしてはかなり静かめだね。けど、かっこいい。切なくて、聴いてると苦しくなる。すごく耳に残る」



私は一気に興奮と感想を吐き出してから、今聞いたばかりのメロディを口ずさむ。


リヒトの作る音楽はいつでも、驚くほど斬新で、それなのに『そうでしかありえない』と思わせられる安定感がある。

だから、一度聞いたらすぐに覚えてしまう。


それくらい印象深いのだ。



リヒトが私の歌にギターの音色を重ねてくる。



夢のような時間。


私は微睡んでいるかのような恍惚感に包まれた。



「………やっぱ、いい曲」



歌い終えて、無意識のうちに呟くと、リヒトが満足げに笑った。



「だろ? ちょっとディランぽくね?」



確かに、と私は頷く。


リヒトの少し掠れた甘い声は、ボブ・ディランに雰囲気が似ている。



でも、リヒトの音楽は、他の誰とも似通ってなんかいない。


リヒトは唯一無二だから。



そう伝えると、リヒトは珍しく、ギターをおろして私の隣に腰を下ろした。



「やっぱレイラはよく分かってんな。あいつらよりよっぽど、さ」