私はリヒトの気に障らないようにそっと腰を上げ、食器を重ねて台所に持っていく。


必要以上の音を立てないよう、最大限の注意を払いながら、食器を洗う。


洗いながらちらりと目を向けると、

リヒトはいつの間にかベッドの上に戻り、アンプに繋いだギターを弾き始めた。



鼻唄を歌いながら、コードにメロディをのせていく。


聴いたことのない旋律だ。

新しい曲を作っているのだろうか。


またアルバムを出させてもらえるのかもしれない。



リヒトのバンド「Dizziness」は、インディーズとはいえ、最近はかなり知名度が上がってきていた。


コアなファンも増えてきて、ライブを観に行くと、かなり熱狂的に騒がれている。


ビジュアルの良いバンドにありがちな、女の子ばかりのファンじゃなくて、

ちゃんと音楽的に惹かれている男性ファンもかなり多い。


だいたい半々くらい、男性が少し多いくらいだ。



ディープな音楽ファンらしい年配の男性までいたりして、それを見るたびに、私は勝手に誇らしくなる。