自分ではそんなつもりなどないのに、私の頭は勝手に、姑息な打算をしているらしい。


自分に好意を抱いているかもしれない異性に、思わせ振りな態度をとろうとしているのだ。



私はなんて卑怯な、汚れた女なんだろう。


あんなにもリヒトに夢中なのに、こんなふうに他の男からの好意を感じとって有頂天になっているなんて。


最低だ。




「―――レイラさん? どうしました?」



ふいにルイが心配そうに声をかけてきた。


自分の考えに埋没していた私は、慌てて顔をあげる。



「どこか調子悪いですか?」


「ううん、ちがうちがう。ちょっとぼーっとしてただけ」



私は笑みを浮かべて首を横に振った。



「………あのね、ルイ」



―――私ね、付き合ってる人、いるの。


そう正直に伝えようと思った。


―――今夜はたまたま予定があわなくて、会えないだけで、ちゃんとそういう人はいるの。



でも、ちょうどそのとき団体のお客さんが来てしまった。



「いらっしゃいませ、ようこそ」



私とルイは話を切り上げて、同時に挨拶をする。


それからは、金曜の夜ということもあって客足は途切れることなく、私は本当のことを打ち明けるタイミングを失ってしまった。