ルイは勘違いをしている。



―――それなのに、

私はなぜか、ルイの言葉をすぐには否定しなかった。


『ちがう。今夜はたまたま会わないだけで、恋人はいるよ』

と訂正すればいいのに、しなかった。



どうしてだろう。



リヒトの存在は私にとって、一般的に言う『恋人』とは、意味が違うから?


それももちろんある。


残酷な神のように冷たくて薄情なリヒトと、その盲目的な信者である私は、普通の恋人関係とは全く異なる。

そんな甘さも優しさも、互いを思いやる心も、私たちの間には欠片も存在していない。


そもそも、リヒトは私を特別な存在だなんて思っていない。


だから、当たり前のようにリヒトを恋人呼ばわりすることなんて、そんなおこがましいことはできない。



………でも。


私は心の中で自嘲的に笑う。



理由はそれだけじゃない。

自分の胸に手を当てて考えれば、明らかだった。



私はルイに、『恋人がいる』と打ち明けるのを躊躇ったのだ。



私に恋人がいないと分かって喜んでいる、と告げてきた年下の男の子に、本当は恋人がいると知られるのが、嫌だったのだ。