「え、なんで?」



予想外の問いかけに、思わず怪訝な声をあげてしまった。



「いや、今ルイと話してたんだけどさ。せっかくレイラの誕生日なんだし、終わってから皆で飲みにでも行きたいねって」


「………え?」


「そういえばさ、あたしもレイラとは一年以上いっしょに働いてるのに、飲みにも行ったことないじゃん」


「まあ、そうだね」


「ちょっと寂しいなーって思って。あ、でも、誕生日だし彼氏さんと食事行ったりする?」



一瞬、リヒトの顔が脳裏に浮かんだ。


でも、昨晩のリヒトの言葉を思い出して、その面影を打ち消した。



「………別に、そういう予定はないけど」



答えると、ユカがにいっと笑う。



「じゃ、決まり」


「えっ」


「なに、他に用事ある?」


「ない……けど、なんか、急展開すぎて」



私は戸惑っていた。


友達も知り合いもいない東京。

私はリヒト以外と食事をするなんて、初めてだった。


大学生のころはもちろん普通に友達やサークル仲間と飲みに行ったりしていたけど、卒業して地元を出てからは一度もなかった。


そう考えると、くすぐったいような、緊張するような、妙に落ち着かない気分だ。