思わず俯いたそのとき、お客さんが一人、ドアを開けて入ってきた。


毎日のように来店してくれる女子学生だ。

大学の授業を終えてから、アルバイトに向かうまでの時間を、カフェ・カナリアでつぶすのが日課らしい。


「いらっしゃいませ、ようこそ」


ルイが笑みを浮かべて挨拶をし、水のグラスを持っていく。

いつも必ずカウンターに座り、冬でもアイスカフェオレを頼むお客さんなので、私はさっそく準備にとりかかった。


円柱形のガラスのコップを手に取り、氷を5つ。


「レイラさん、アイスカフェオレお願いします」


オーダーをとって戻ってきたルイの目を見ずに、あたしは頷いた。



アイスコーヒーを半分くらいまで注ぐ。

それから、牛乳を細く細く、そっと注ぎ入れる。


牛乳が静かにコーヒーの下に沈んでいき、濃いブラウンと白の二層にきれいに分かれた。


一連の動作をしているうちに、ルイの意味深な言葉と笑顔で落ち着きを失っていた心が少しずつ穏やかになっていった。



カナリアは昔ながらの喫茶店で、ドリンクメニューもシンプルだ。


ブレンドコーヒー、アイスコーヒー、アメリカンコーヒー、カフェオレ、紅茶、オレンジジュース。


その中で、私はアイスカフェオレを作るのが一番好きだ。

きれいなツートーンに仕上がると、誇らしい気持ちになる。


今日もいつも通りに二層を作れたことで、私は自分を取り戻したように安堵していた。