財布を持って外に出た途端に、皮膚を切り裂くような冷気に包まれた。


速足で近くのコンビニに行き、カルボナーラを買う。


店に戻る途中で、持っていたスマホが震えた。


画面表示を見てため息が出る。

とらないでおこうかと思ったけど、そうすればまた今夜か明日にでもかかってくることが分かっていたので、私は通話ボタンをタップした。



「もしもし」


『玲羅? 久しぶりね』


「うん……どうしたの、何か用?」


『あら、親が用事なきゃ電話しちゃいけないの?』



どうやら機嫌が悪いらしいな、と、向こうには聞こえないように息を吐く。



「別にそういうわけじゃないけど」


『けど、何よ?』


「いや、今バイトの休憩中だから、あんまり時間なくて」



お母さんの機嫌がさらに悪くなったのが伝わってきた。



『玲羅、あなたまだアルバイトしてるの? ちゃんとした正社員の採用試験は受けてるんでしょうね?』


「………うん、まあ、そのうち、落ち着いたらね」


『落ち着いたらって、もう三年も経ってるじゃない。何を考えてるのよ』


「………うん、ごめん。ちゃんとするから」



その場しのぎの、うわべだけの言い訳。


とにかく目の前の火の粉を払うことしか考えられなかった。