「ほんとですか。うれしいな、レイラさんにそう言ってもらえると」


「ほんとほんと。最初のころのどたばたぶりからは考えられないくらい」


「うわ、それは言わないお約束でしょ」



ルイが情けない表情で眉を下げる。


その顔がおかしくて、私はあははと笑った。



ルイがバイトとして店に入ってきたのは、3ヶ月前。



ホールスタッフとしては、オーダーミスやレジのミスはほとんどなく、接客もうまくて、最初から優秀だった。


でも、キッチンスタッフとしてはひどいものだったのだ。

料理の経験がなかったようで、せっかく淹れた珈琲はこぼすし、トーストは焦がすし、キャベツの千切りをするときに指まで切ってしまうし、みんなに世話や心配をかけていた。


でも、1ヶ月ほど過ぎたときには、ベテランスタッフと変わらないくらいの働きぶりを見せるようになった。


私が教育担当だったのだけれど、もともと頭の回転が早く要領がよくて、飲み込みも早かったので、教え甲斐のある新人だった。


今となっては、一番頼れるアルバイトだ。



「でも、ほんと、そう言ってもらえて嬉しいです。レイラさんに認めてもらいたくて頑張ったんで」



ルイがいつもより柔らかい笑みを浮かべて、私の顔を覗きこむようにして言った。


ときどきこういう意味深なことを言ってくるので、困ってしまう。