開店して5分もしないうちに、いつも来てくれる40代くらいのサラリーマンが入ってきた。


それからも続々とお客さんが来店する。



ルイがキッチンに入り、私はホールでオーダーをとった。



店内の客席は、4、5人がけのテーブルが15台と、窓際のカウンターが10席。


満席になると60人以上が入れることになる。


いくら朝とはいえ、これだけの広さでスタッフがキッチンとホールの二人だけというのはかなりきついのだけれど、

(さすがに昼以降は三人以上になる)


人件費を削減したい会社の方針なので、仕方がない。



ルイが手際よく珈琲を淹れたり、トーストを焼きながらサラダを盛ったり、ピラフを炒めたりしていく。


オーダーされたものを順序どおりにてきぱきと出していってくれるので、なんとか回せる。



要領の悪いスタッフと組んでいるときには、通勤途中で電車の時間を気にしていたりして余裕のないお客さんから、「遅い、早くしろ」とクレームが出ることも珍しくなかった。


そういうときは、バイトリーダーを任されてしまった私が対応しなければならないので、精神的にも疲れてしまう。



「ルイ、だいぶ慣れてきたね」



通勤ラッシュのお客さんが退けて少し余裕が出てきたとき、私はキッチンに入って洗いものを手伝いながら、ルイに声をかけた。



「てきぱきやってくれるから、すごく助かる」



そう言うと、ルイはぱっと顔を輝かせた。