「おはよ、ルイ。早いね」


「レイラさんこそ。あっ、キッチンのそうじまで終わってる! 今日は俺の担当なのに」


「早く来ちゃってひまだったから」


「なんか申し訳ないなあ」とルイが眉を下げた。


「いいよ、べつに。私が好きでやってるんだから」


「なんかすみません」


「気にしないで」


「なにかすることあります?」


「あ、じゃあ、開店準備おねがい」



そう言ってシャッターの鍵と〈open〉の札を渡すと、ルイは「了解です!」と笑って、ぱたぱたと外へ出ていった。


元気だなあ、と私は微笑ましく見送る。



明るく朗らかで人懐っこいルイは、スタッフからもお客さんからも好かれている。


茶色い猫っ毛に、ぱっちりとした二重の大きな瞳。

にっこりと笑うと、口許には八重歯が覗く。


人好きのする容姿をしていることもあって、昼どきにやってくるおばさんたちからは、まるでアイドルのようにちやほやと可愛がられていた。



こういうふうに周りを明るくするようなオーラをもった子がいてくれると、店の雰囲気まで良くなるので、とても助かっている。



「レイラさーん、もう看板も外に出しちゃっていいですか?」



シャッターを開けたルイが、ドアの隙間からこちらを覗きこんで言った。



「うん、いいよ。おねがいします」


「よろこんで!」



ルイは弾けるような笑顔で敬礼をしてみせた。


八重歯のせいか、いたずら好きな子どものように見える。