あの子はリヒトの何なのだろう。

恋人だろうか。


でも、そんな簡単な言葉では言い表せないくらいの深い想いが、リヒトの囁きにも、そしてあの子の眼差しにも、はっきりと込められていた気がする。



「―――リヒトにはリヒトの物語があるんだ」



私の全く知らなかった物語をリヒトは生きてきて、そしてこれからもその物語を生きていくんだ。


そんな簡単なことに、今さら気がついた。



「え? なんか言った?」



ルイが首をかしげて覗きこんでくる。


私は「なんでもない」と微笑み返して、ルイの手を握った。


まるで自分の一部であるかのように、しっくりと馴染む。


いつの間にか、ルイは私にとって、なくてはならない存在になった。


リヒトに感じていたような、燃えるような焦がれるような想いとは違うけれど、

ルイと一緒にいると、あたたかい羽毛に包まれたような安心感と穏やかな喜びを感じる。



私はもう、ルイのいない生活は考えられない。

ルイのいない未来は考えられない。



「………大好きだよ、ルイ」



愛しさを込めて囁くと、ルイが「俺も」と笑った。


それから、ふいに抱き締められる。