ルイは黙って私の話に耳を傾けてくれている。


それに励まされて、私は言葉を続けた。



「リヒトは、本当はものすごく遠い存在で、私とリヒトの人生は絶対に重ならないはずだったのに。

たまたま運命のいたずらで接点をもっちゃって………。

でも、私はリヒトといつまでも一緒にいられるなんて思いもしなかったし、そうしたいとも思ってなかったよ」



今になって思えば、あの頃の私は、かぎりなく刹那的に生きていた。

リヒトを独占したいなんて、独占できるなんて、かけらほども思っていなかった。


つまり、そういうことなのだ。

私とリヒトは、恋人なんかじゃなかった。



ぼんやりと考えていると、ルイがふいに「でも」と口を開いた。


目を細めてマフラーを引き上げながら、ぽつりと呟く。



「………さっき、リヒトさん、こっち見て何か言ってたよね。俺には、レイラ、って言ってたように見えたんだけど」



ルイは心なしかいじけたように唇を尖らせている。


その唇をつまんで私は笑った。



「ちがうよ。あれは私を呼んだんじゃない」


「え? そうなの?」



私は駅に向かって歩き出した。


ルイが横にならんで歩く。