「………ああ、かっこよかったな………」



ライブハウスを出ると、ルイが白い息を吐きながら夜空を見上げ、ぼんやりと呟いた。



「リヒトさんって、ほんと、ステージに立ってスポットライトを浴びるために生まれてきたんだなあ、とか思った」



私は同意するように小さく頷く。


あの頃と全く変わらずに、音楽の中にいるリヒトはやっぱり、鮮烈すぎる光だった。



「あれは反則だよ………どうしようもないくらい夢中になっちゃったって気持ち、分かるな」



ルイが私を見おろしながら、嘆くように吐息をもらしながら言った。


もしかして嫉妬してくれているのかな、と思って、私は「ばか」と小さく笑う。



「今はルイに夢中だから、安心して」


「………うん」



ルイが嬉しそうに目尻を下げた。


あまりに可愛いので、私はその頬に軽くキスをする。


人目も気にせずに。

いつになく大胆になったのは、さっきライブが終わった後に飲んだビールのせいかもしれない。



「―――リヒトに対する気持ちはね、いま思えば、恋愛の好きじゃなくて、ただの憧れだったんだと思う。きらきらした華やかな姿に憧れてた。

だって、私は何よりも、ギターを弾いて、歌を歌ってるリヒトが好きだったから。

たぶん、女の子たちアイドルとか俳優とかを好きっていうようなのに近かったのかな」