「うわ、すごい人! こんなに人気あるんだ」



ライブハウスの外にできた長蛇の列を見て、ルイが目を丸くしている。



「そうだね………2年前はここまでじゃなかったけど」


「最近はテレビにも時々出てるもんね」


「うん」


「やっぱり女の子のファンが多いんだ。でも、男もかなり多いな」



私たちは入場待ちの行列に加わり、順番が来るのを待った。



冷たい風の吹き荒れる外で20分ほど待って、やっと会場に入ることができた。



中にはグッズの販売コーナーがあって、お客さんたちが大勢並んでいる。


そこは素通りして、ライブが行われるホールに入った。



「せっかくだから前に行きたいな」


「うん。でも、ルイ、ライブ初めてでしょ? 前ってけっこうごちゃごちゃして大変だよ」


「え、そうなの? でもなあ、せっかくの機会だし………」


「じゃあ、端っこのほうに行こうか。それなら潰されることもないし」



私はルイの手を引いて、最前列の右端をキープした。



後ろに来た女の子たちが、興奮した様子で話をしている。



「やばい、めっちゃどきどきする!」


「はじめて生で見れるー!」


「めちゃめちゃかっこいいよね、絶対!」


「そりゃそうでしょ」


「わー、あたし最後までもつかな」


「ちょっと、気絶とかしないでよ?」


「しないよ! もったいないもん。二時間ぜんぶ目に焼きつけるから!」