「そんなわけ………ない」



言ってしまってから、自分の正直な気持ちを自覚した。



ルイのことを少しも好きじゃないなんて、あるはずがない。



何度も何度も助けられて、

私にはもったいないくらいの優しさをもらって、

こんなに一途に想われて、


―――ルイを好きにならずにいられるわけがない。



私を見つめる真摯な瞳。

私に触れる指の優しさ。

私を好きだと言ってくれた声の熱。


ルイの全てが私の心に灼きついている。



………でも。



「俺のこと、嫌いじゃないですよね?」



ルイの問いかけに、私は無意識に小さく頷く。



「ですよね………そう思ってました」



ルイがにこっと笑う。


唇の隙間から八重歯が覗いた。



ああ、ルイのこの表情、好きだな。


心が勝手にそんなことを思う。



もう止められない。


私の心は私の思惑を離れて、勝手にどんどん、ルイに惹かれていってしまうのだ。



でも、こんなに自分勝手なことを思う私は最低だ。



「レイラさん、抱きしめてもいいですか」



私の戸惑いをよそに、ルイが顔を近づけてくる。


うん、とも、だめ、とも言えずに、私は眉根を寄せてルイを見つめ返した。



それとほとんど同時に、ルイが動く。


気がついたときには、ルイの腕の中に囚われていた。