「えっ」



ルイが驚いたように目を丸くしたので、私はそれでやっと、自分の口にした言葉の意味に気がついた。



「部屋にあげてくれるんですか」


「ええと………」



自分から言っておいて、今さら取り消すことなんてできない。



「………うん。なんかあったかいもの飲もう」



ルイの顔がぱっと明るく輝いた。




私たちはゆっくりと来た道を戻る。



お正月の住宅街はひっそりと静まり返っていて、人影ひとつ見えない。


まるで二人だけの世界のようだ。



なんとなくお互いに黙ったまま5分くらい歩いたところで、突然ルイが「レイラさん」と口を開いた。



「………手、つなぎたいな」



ルイは少し顔をうつむけて、独り言のように呟く。


私は慌てて視線を逸らした。



「つないでもいいですか」



ルイがちらりと目を向けてくるのを視界の端にとらえて、私は小さく息を吐く。



「………いちいち聞かないでよ。答えるの、恥ずかしいんだけど」



そう答えた瞬間、右手をぐいっと引かれた。


そのまま、ルイの左手に包み込まれる。



掌のぬくもりに、勝手に胸が高鳴った。



「………ルイの手、あったかいね」


「レイラさんの手が冷たすぎるんですよ」


「そうかな………」



ルイの熱がうつって、凍えていた私の指も温まっていく。


アパートに着くまで、ルイは手を離さなかった。