「なに言ってるの」



どきりと胸が高鳴るのを意識しないようにしながら、私はルイの横で靴をはく。



「お礼を言わなきゃいけないのはこっちだよ。プレゼントしてもらったんだから」


「でも、俺のあげたマフラーをレイラさんが使ってると思うと、お礼を言わずにはいられないんですよ」



いちいちこちらが返答に困るようなことばかり言う。


ルイといると、落ち着かないことばかりだ。



「お返しもあげてないし」



私は気持ちの揺れをごまかすように喋りつづけながら、ルイのわきをすりぬけるようにして玄関の外に出た。



「でも、この前、キスしてくれましたよね」



あまりに直接的な言い方に戸惑って、私は一瞬足を止めてしまったけれど、なんとか自分を奮い立たせて、階段のほうに向かって足を踏み出す。


ルイが横に並んで歩き出した。



「あれは―――ちゃんとしたお返しじゃないでしょ。なにか欲しい物、ないの?」


「ちゃんとしたお返し?」


「例えば、お財布とか、定期入れとか」


「なるほど。じゃあ、今日のデートはお返しってことにしよう」


「え?」



聞き間違いかと思って目をあげると、ルイがにっと笑った。