「それで、『電話番号教えろ』っていきなり言われて、なんとなく気圧されて、教えちゃったんです。

リヒトさんはそれだけ聞いて、自分の連絡先は言わずに、そのまま帰っていきました」



………なにを考えていたんだろう、リヒトは。

まさかルイの連絡先を聞くなんて。


私の知る限り、リヒトはよほどの必要性がないと、自分から誰かの番号やアドレスを聞くことはない。

少し会っただけの人と連絡をとろうとするほど、リヒトは社交的じゃないはずだ。



私の戸惑いをよそに、ルイは話を続ける。



「そしたら、さっき……4時すぎくらいかな、電話が鳴って。

夜中だし、知らない番号だし、無視しようと思ったんですけど。

リヒトさんのこと思い出して、まさかと思って出てみたら―――というわけです」



私は唖然としたまま何も言えなかった。


自分の知らないところで、二人がそんなやりとりをしていたなんて、想像さえできない。



ぼんやりと見上げていると、ルイがふいに苦い笑みを浮かべた。



「………できれば、こんな話は聞かせたくなかったんですけど。でも、黙ってるのもずるいと思うので、言います」


「え?」


「リヒトさんは、電話で、俺にこう言いました」