ルイはいつもの穏やかな微笑みを浮かべて、脱いだジャケットを私の背中にかけてくれていた。



「………こんなところで、濡れながら座ってるなんて。また風邪ひくつもりですか」



少し呆れたような口調。


何か言い返そうと思ったけれど、何も言葉が出なかった。



ついさっきまでルイの身体を包んでいたジャケットは、冷えきった私の身体には、震えがくるほど温かかった。



「………ごめん。ありがとう」


「いえ。とにかく、あったかいところに行きましょう」



ルイが私の肩を両側から包み込むようにして、ゆっくりと立ち上がらせた。



「………ごめん、ルイ、ちょっと待って。足が………」



雪の降るなかで何時間も座っていたせいか、足がほとんど感覚を失っている。


すると、それを察したのか、ルイがいきなり地面にしゃがみこんだ。


何事かと思って目を落とすと、ルイが私の脚をさすりはじめる。



「………っ、ルイ! なにするの、やめて!」


「え? 痛いですか?」



ルイはきょとんとした顔で私を見上げる。



「………痛いとかじゃなくて。やめて、そんなこと………」


「どうしてですか」



本当は、ルイにそんなことはさせられないからだ。


でも、そう言っても納得してもらえない気がしたので、「恥ずかしいから………」と答える。