「―――きれい………」



私は朝日の輝くほうに目を向けた。



人影もまばらな、早朝の街。


静まり返ったビルとビルの間を抜けて、

白く鮮烈な、目映いほど明るい朝の光は、まっすぐにこちらへ射し込んでくる。



なんてきれいなんだろう。


リヒトがいないというのに、それでも私の目に映る世界は、こんなにも美しい。



それが腑に落ちなくて、私は透明な朝陽に浄化される街をぼんやりと眺めつづけていた。



そして、眠ったように静かだった街に、少しずつ足音が響き始めたころ。



「―――大丈夫?」



鼓膜を震わせる、いたわるような優しい声。


私は、視界を遮る人影に視線を向けた。



朝陽を背に受けて逆光になっているので、顔は見えない。


でも、その声を聞けば、分からないはずがない。



「………なんで、いるのよ………」



私は顔をくしゃりと歪めて、膝に顔を埋ずめた。


声が震えて、うまく喋れない。



「なんでいつも、こんなときに、傍にいるの………」



ぎゅっと目をつむって、責めるように言うと、背中がふわりと温かくなった。



「―――ルイ」


「はい」



すぐに応える声。


私はまた涙の溢れはじめた目をあげた。