私は膝に顔を埋めてひたすらに泣きじゃくる。



ジーンズがびしょ濡れになって、風が吹くと刺すように冷たい。


でも、凍えるほどの寒さも、どうでもいい。


肩や背中に積もった雪も、たいして冷たくない。



もう周囲の目も気にならなかった。



一度、誰かに「大丈夫? 送ってあげようか?」と声をかけられて、面倒になったので泣きながらその場を去った。


それから、目的もなく、どこへともなく、しゃくりあげながら歩きつづけ、疲れたら座る、という無意味なことを繰り返した。




―――どれくらいの時間が経っただろう。


涙も枯れ果てて底をついたころ、私はゆっくりと顔をあげた。



いつの間にか夜の闇が去り、雪は止み、あたりは明るくなっていた。


少し微睡んでいたかもしれない。



身体を動かそうとすると、節々がぎしぎしと音を立てる。

冷えきって関節が固まってしまっているらしい。


ぎこちなく首を動かして周りを見てみる。


暗いうちには分からなかったけれど、私はどこかの店の軒下に座り込んでいた。


店先に置かれたクリスマスツリーの葉先には無数の露がついている。


ゆうべの雪が解けて、ツリーを彩る透明の光の粒になったのだろう。



透き通った水滴に、冬の朝の清らかな陽射しが差し込んで、四方に光が拡散されたそのさまは、息を呑むほど美しかった。