「はじめまして。ルイと言います。レイラさんにいつもお世話になっています」



ルイは誠実な口調で、丁寧に挨拶をした。


リヒトが「ふうん」と小さく頷く。



「世話って?」



言葉少なに言い、リヒトが私を見下ろした。


答えようとすると、先にルイが口を開く。



「俺もカナリアでバイトしてるんです」



リヒトがルイに視線を戻し、「カナリア」と呟いて、かすかに首を傾げた。



「レイラさんが働いてる喫茶店ですよ」


「へえ………お前、喫茶店で働いてんだ」



リヒトが眉をあげて私を見た。


ルイが小さく息をのむ音が聞こえる。



「………知らなかったんですか」



低く問われて、リヒトは唇の端をくっとあげる。



「ああ。レイラがどこで働いてるのかなんて、べつに興味ないからな」



リヒトが淡々と告げると、ルイが目を丸くして、それから慌てたように私に視線を落とした。


その眼差しに気づかうような気配を感じて、私は『大丈夫』というように微笑みをつくる。



そんなことは知っていた。


リヒトにとっては、私がどんな生活をしているのかなんて、どこで何をしているかなんて、まったく興味がないのだ。



それは私に対してだけではなく、誰に対しても同じ。


リヒトは他人の私生活になんて、かけらほども関心をもたない。