絡み合う三人分の視線。


凍りついたような空気。



膠着状態をやぶって動きだしたのは、リヒトだった。


リヒトが足を踏み出したとき、このまま立ち去ってしまうのだろうと思った。


でも、ちがった。

リヒトの視線はまっすぐにこちらへ向かっていた。


人混みの波間をするすると泳ぐようにして、ゆっくりとこちらに近づいてくる。


リヒトが歩くと人の流れが自然に変わり、リヒトのために道をあけるように動くのが不思議だ。




「………よう、レイラ」



薄い笑みを唇に浮かべて、リヒトが私の前に立った。



「………リヒト」



目の前の男を、私は陶然と見つめる。



雪の舞い散る夜の中に佇む黒づくめのリヒトの姿は、目を離せなくなるくらい美しい。


冬の街に降り立った悪魔のようだと思った。



イルミネーションの光を受けた瞳が煌めいている。


その視線がふっと横に流れて、私の隣に立つ男に注がれる。



「―――お前は?」



新顔の下僕に素性を問いただす王のように、横柄な口調でリヒトは訊ねかけた。



ルイが怖じ気づいてしまうのではないかと思って、私はルイを見上げる。



意外にも、ルイはリヒトの視線を正面から受け止めていた。