「………レイラさん」



ルイの唇から、かすれた声がもれる。


それを聞いた瞬間、あとにはひけなくなった。



私は両手をルイの頬にあて、うつむかせ、

つま先立ちになる。



―――こんなものでいいなら。


こんなつまらないもので、あなたが少しでも喜んでくれるなら。


それなら、いくらでも、あげる。



そんなことを思いながら、私はルイの頬に、ついばむように唇を触れた。


軽く、ほんの一瞬ふれただけのキス。



それなのに。



「………レイラさん、ありがとう」



ルイは泣きそうに顔をゆがめて、それでも微笑んで、

私の手をつつみこむように捧げもち、額に押し当てた。



「俺の自分勝手な我儘を叶えてくれて、本当にありがとうございます。―――嬉しい」



私の手の甲に額をつけて、くぐもった声で囁くルイを見つめながら、

私は自分の頬が歪むのを感じた。




………私は最低な女だ。



あれほど、リヒトから離れられないと言いながら、


ルイに慕われているのを感じて、つけあがって、その頬にキスをして、

喜ぶルイを見て、満足を感じている。



最悪だ。


私は醜い―――。